多摩市東部の米軍施設「多摩サービス補助施設」(元多摩弾薬庫)に隣接する連光寺6丁目の一部に、宅地開発から取り残されたよな丘陵の雑木林と、裾に広がる湿地帯がある。この一帯は谷戸(やと)と呼ばれる地形で、丘陵から集まった伏流水が小川となって流れ、希少な種のスジグロボタルやクロマドボタルを含む多種多様な動植物が生息する。
この豊かな環境を守るために、自然の恵みと共生してきた先人の暮らしの知恵に学び、「田んぼの手作り」を始めた市民の有志たちがいる。伝統的な稲作を体験的に学びながら、土地と人の関わり方を考え、さらには「ニュータウン再生」のヒントも得られたらとの思いで、昨年末から活動を開始。土地の所有者に許可を得て、小川沿いの一角にうずたかく積まれた廃材を片付けるところから着手したという。5月下旬の週末に取材した作業の様子を、フォトレポート形式でお届けする。(高森郁哉)
小川沿いの低湿地には黄菖蒲(きしょうぶ)が咲き誇り、斜面には雑木林と竹林が広がる。
3月に田起こしを始め、毎月2回程度集まって作業を進めてきた。まず田と苗(なえ)の状態を見て、この日の作業内容を検討する。
苗床(手前)に5月1日に種まきをした苗が十分に成長していないため、田植えは6月に延期。田の状態を整えることがこの日の主な作業に決まる。
田植前の田に水を満たし、土のかたまりを砕き、ならす作業のことを「代掻き」(しろかき)という。草木の根や埋められた竹材なども取り除く必要がある。
畦(あぜ)の側面を固めていく「畦塗り」。
5メートル四方のメインの田に加え、隣に細長い小さめの田も掘り始めた。
昼は、作業している土地に隣接する西原喜久江さん宅の庭で食事休憩。各自が持ち寄った手料理や旅行の土産品を交換して味わいながら、作業の進め方を話し合う。
メンバーに農業経験者はいない。本を読んで勉強したり、市内の農家の方に教わるなどして学びながら、初めての稲作に挑戦している。
田の脇に新しい取水路を掘った。冷たい小川の水が田に入るまえに地熱で少し温まるよう、既設の取水路よりも距離を取っている。
水を張った田の表面をならしていく。
代掻きの作業がほぼ完了。苗が育てばいよいよ田植えだ。
皆さんお疲れさまでした!