恵泉女学園大学の南野キャンパス(多摩市南野2-11)に、地域交流と被災地支援の拠点となる「オーガニックカフェ」が近く常設される。同学の在学生や卒業生が運営に関わり、学生や大学関係者だけでなく地域住民も利用できるという。今秋の営業開始に向けて準備を進めている人間環境学科の澤登早苗教授(園芸学)に話を聞いた。
恵泉大では、学内に「花と平和のミュージアム」(仮称)を作るというプロジェクトが進行中で、その一環として園芸関係の資料室とオーガニックカフェの2つを先行して進めている。オーガニックカフェについては、昨年5月末のスプリングフェスティバルで最初に実施し、翌月から今年まで1年余り、週に2回学内向けに昼休み限定で開催してきたという。
「オーガニック」を売りにするのは、恵泉大が教育機関として日本初の有機認証を取得した農場を持っているということが大きい。また、「人と人との顔の見える関係を大切にする」ことも、カフェの重要なコンセプトだと澤登教授は説明する。具体的には、生産者の顔が見える産品を扱い、生産者の思いを伝えることを目指す。メニュー構成などは今後考えていくが、これまでの試行では、福島県の生産者を応援するため、同県の有機農家が生産した米(セシウム等のチェックを行い問題ないもの)を仕入れてカレーライスに使うなどしてきた。「野菜についても入手可能な範囲で、私たちが直接知っている福島の有機農家の作物を使う。将来的には、学内で学生たちが収穫したものも使っていきたい」と同教授。
これまでイベント等で販売して好評だった小高商業高校の「小高だいこんかりんとう」や、福島産の米や野菜なども、カフェが常設になれば扱いやすくなるので、利用客が購入できるようにしていきたいとのこと。
これまでの学園祭などでのスポット的な実施では、一時的な許可で済んだが、常設となると営業許可を取る必要がある。施設を改修したり、学生たちを集めて定期的に運営できるような組織にしていくといった課題もある。運営に関わる学生たちにとってカフェは、アルバイトの感覚で働く場ではなく、社会的企業の意味合いを持つ。澤登教授は、学生にも食品衛生管理責任者の資格を取るよう勧めていて、すでに複数の学生が取得。将来的には学生や卒業生たちが、NPOなどの形で主体的に運営にかかわってくれることを期待している。
地域の住民に利用してもらうためのアイデアとしては、たとえば、一人暮らしのシニア向けに料理教室を開き、参加者と学生スタッフが一緒に食べる。あるいは、子育て中のお母さんたちを対象に、子供たちをそばで遊ばせながら食事をしたり映画を観たりといったイベントを企画する。「単なるカフェではなく、地域住民が交流できるコミュニティースペースとしての仕掛けをたくさん作る。それを通して学生たちが学ぶ、そういうスペースをここで展開していきたい」と澤登教授は構想を語った。