多摩市立関戸・一ノ宮コミュニティセンター(関・一つむぎ館)で3月11日、復興支援講演会「福島(浪江町)の現状と課題」が開催された。福島県浪江町商工会長の原田雄一さんを講師に招き、定員を超える105名が詰めかけた。
原田さんは3年前の3月11日、浪江町で営む眼鏡店で接客中に地震に遭い、骨折した母親を南相馬の病院まで車で運んだ。当時は「原発は安全な建物だと信じ、心配していなかった」と振り返る。しかし翌日、避難指示が出されたため、せいぜい2、3日程度のつもりで着替えなども用意せず、大渋滞の国道を通って会津若松に避難した。後で知ったことだが、原発立地町村には避難用のバスが何十台も来たのに、浪江などの隣接町村には情報が一切入らず、町長さえも原発事故の事態を報道で知ったという。
その後、避難先を二本松市に移した原田さんは、離ればなれになった町民の絆を失わないようにと、二本松の商店主らに協力してもらって盆踊りや「十日市祭」を開催。それぞれの避難先から集まった町民たちが、久しぶりの再会に涙を流す姿があちこちで見られたという。
浪江町復興に取り組む「まちづくりNPO新町なみえ」を立ち上げ、プロジェクト策定や提言を行ってきた原田さん。自分たちが抱えている問題点として、(1)最初に「放射能で汚れた双葉郡をどうするか」の議論がなされなかったため、復興計画が市町村ごとにばらばらになってしまった(2)「中間貯蔵施設」と言うが、本当に30年後に他県に移せるのか。双葉郡だけにできたら、「核に汚れた県」という差別がさらに広がる(3)原発事故の最大の被害者は子供たち。大人は、被災地の子供たちがこの先の長い人生で差別されないよう取り組む必要がある(4)現在の浪江町の事業再開率は25.7%で、双葉郡の他の町村に比べ極端に低い。事業再開にはコミュニティの再生が不可欠だが、時間が経つほどに困難になっていく――などを挙げた。
3年が経ち、町民たちの間に「浪江の美化」が始まっているが、過去の美化された思い出は邪魔になる、と原田さん。あくまでも穏やかな表情で語った、「『ふるさと』の歌を嫌いになろうと思う。後ろを向いて感傷に浸っていてはいけない。前を向いていかなければ」という悲愴な決意が胸を打った。
主催した桜ヶ丘商店会連合会の平清太郎会長は、「福島県から13万人以上が今も避難生活を続け、復興を実感できずにいる。首都の繁栄を支えてきた福島の窮状を、見て見ぬふりはできない。桜ヶ丘商店会はこれからも支援を続けていきます」と語った。
午後2時46分、震災直後に撮影された浪江町請戸地区の衛星写真に向かい、参加者らが黙祷。
関・一つむぎ館3階のギャラリーでは、復興支援パネル展も開催中。3月31日まで。
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