あの“吉田栄作”が、多摩センターのど真ん中ココリアの前に登場。
白いTシャツにジーンズ。かつてのテレビの中から抜け出してきたような出で立ちで、栄作氏は現れた。その佇まいには、若かりし日の直線的なかっこよさに、時を重ねた渋みが溶け込み、見る者の心をしずかに揺さぶった。遠くにいたはずのスターが、ほんの数メートル先で、声を、目線を、届けてくるのだから不思議だ。
語られたのは多摩センターでのエピソード。ほんのりと笑いを誘う地元話に、客席もゆるやかにほぐれていく。そしてオープニングアクトをつとめた地元アイドル「ディゼル」とのやりとりも心地よい。
アンコールでは、ディゼルのメンバーとともに一曲を歌いあげる。世代もスタイルも異なる声が交わるその瞬間、多摩センターの交差点がふいに、どこでもない“特別な場所”へと変わっていった。
しかもCD（1650円）を購入した者には、前列の特等席、握手、サイン、そしてほんのひと言の会話まで許されるという、なんとも贅沢な時間。あれは幻だったのか、それとも何かの祝祭だったのか。
吉田栄作は最後までさわやかだった。
風のように現れて、風のように去っていった。
けれど残された空気には、たしかにあの午後の光と歌声と、少しだけ非日常のきらめきが、まだ漂っていた。
吉田栄作歌手デビュー35周年記念シングル【Faith】リリースミニライブ in 多摩センター
