特別賞には、『祖谷物語 〜おくのひと〜』の蔦哲一朗(つたてついちろう)監督およびスタッフ・キャスト一同が選ばれた。日本三大秘境といわれる徳島県・祖谷(いや)を舞台に、都会からやってきた若者と人里離れた大自然の中で暮らす人々の交流を描いた作品。厳しい自然環境で1年間かけてロケ撮影を敢行し、35ミリフィルムに四季折々の表情を収めたことも評価された。
セレモニーには蔦監督のほか、主演の武田梨奈さん、共演の大西信満さんと山本圭祐さん、脚本・制作の上田真之さんも登壇した。
蔦監督は、「数ある公開作品の中から、自主製作のこの映画を選んでいただいて、ご覧になった多摩のみなさんが物好きでよかった」と笑わせ、「スタッフ・キャスト一同受賞とのことですが、(それだけでなく)ボランティアで関わってくれた徳島のみなさん、徳島の大地に感謝したい」と謝辞を述べた。
35ミリフィルムへのこだわりについては、「時代がデジタルになっているにもかかわらず、自分がフィルム馬鹿というか、フィルムでしか映画を撮ってこなかったので、逆にデジタルの撮り方が分からない。自分が憧れている映画が今のところすべてフィルムで撮られているので、それに少しでも近づきたいという思いでフィルムで撮り続けています」と語っていた。
空手の黒帯保持者で、『KG カラテガール』『デッド寿司』などアクション系の主演作も多い武田梨奈さんは、「私は最近(テレビCMで)頭で瓦をよく割っているのでそっち系の人かと思われているんですけど、実は映画を中心に活動して今年で9年目です」と自己紹介した上で、「この作品は1年間撮影し、当初は映画が公開されるかも分からない状態で、誰にも観てもらえないかもしれないという不安もあったが、今回のようにこのような賞をいただけて、みなさんに観てもらえて本当に嬉しい。どんなに小さな映画でも地道なことでも、観てくれる人は必ずいるということを実感できた。またここに戻ってこられるようがんばります」と誓った。
大西信満さんは、「さきほどスタッフの方に初めて聞いたのですが、どうやら自分はこの映画賞で最多出場らしい。考えてみれば、自分が出る小さな映画もちゃんと世間に広める手助けをしてもらった。(『祖谷物語』も)本当に小さい作品ですが、晴れやかな舞台にかけていただけることを感謝しています」と礼を述べていた。
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