多摩市の阿部裕行市長は1月23日の定例記者会見で、市内全域への太陽光発電普及を主導するプロジェクトとして、市有施設の「屋根貸し」による太陽光発電設備の設置を実施すると発表した。市民が立ち上げた一般社団法人多摩循環型エネルギー協会(多摩エネ協)が環境省から委託された「地域主導型再生可能エネルギー事業化検討業務」の枠組みを通じ、多摩市環境部職員や専門家、識者などが事業化検討協議会の委員として、事業の公益性や継続性、屋根の貸し手側のリスク、候補物件の設置可能性などを検討。候補24施設から選定された11施設を対象に、合計約600kWの太陽光発電施設を設置する方向で、市、多摩エネ協、および多摩エネ協メンバーが事業主体として設立した多摩電力合同会社の3者が近く事業協定書を締結する。
多摩市環境部の磯貝浩二資源循環推進担当課長によると、新耐震基準で建築された建築面積1000平方メートル以上の施設を候補として、屋根の形状、防水の状態などを調査し、絞り込んだという。設置予定施設は、桜ヶ丘コミュニティセンター(ゆう桜ヶ丘)、鶴牧・落合・南野コミュニティセンター(トムハウス)、関戸第一・第二住宅、資源化センター(エコプラザ多摩)、多摩第一小、聖ヶ丘小、大松台小、聖ヶ丘中、鶴牧中、旧中諏訪小グラウンドの11施設。
市は、設置事業者の多摩電力に20年間貸与し、1kWあたり年額1700円程度の料金を受け取る契約を結ぶ見込み。同事業では、締結後に詳細な設計を行い、3月下旬から順次着工する予定で、5月上旬頃から発電を開始できそうだという。いずれの発電設備でも、固定価格買取制度(FIT)を利用し、全量を東京電力に売電する。
市によると、市内住宅の7割以上を占める集合住宅への普及を見据え、設備設置にかかる課題等の検証、発電データの検証、再エネの普及推進活動などを協定に基づき共同で行っていくという。阿部市長は、「市民の熱い思いが、環境省の後押しも得て、公共施設の屋根貸しによる太陽光発電設備の設置につながった。これをモデルケースに、市内集合住宅へ、さらには近隣自治体にも広げていきたい」と展望を語った。磯貝課長も、「集合住宅の管理組合が自前でパネルを設置する場合は、費用負担をどうするかで合意形成が難しい。その点、屋根貸しモデルは費用負担がないので、合意を得やすいのでは。契約やリスクに関する疑問に答える問答集を3月中に公表し、普及推進を図りたい」と述べた。
多摩市環境部
多摩電力合同会社
一般社団法人多摩循環型エネルギー協会