7月23日午後、多摩市諏訪2丁目団地において、「ありがとう!諏訪2丁目住宅 大感謝祭」が開かれた。同住宅は多摩ニュータウン(NT)のさきがけとして、1971年に入居が始まり41年が経過。建物の老朽化、住民の高齢化が進み、昨年3月に全面建て替えが決定され、現在は全ての住民が退去し再開発に取り掛かる段階になっている。
大感謝祭の第1部では、NPO団地再生研究会による建て替え事業の取り組みについての報告があった。同住宅建替組合の加藤輝雄理事長をはじめ4人のパネリストが、活動経緯、合意形成の過程や課題、建て替え計画について説明した。会場となった団地集会所には、住民をはじめ、多摩市の阿部裕行市長、他の集合住宅の管理組合関係者や報道関係者など、100人以上が集まった。
説明後の質疑応答では他団地からの質問が目立ち、建て替えへの関心の高さがうかがえた。今後老朽化する多くの集合住宅において、保守や建て替えを検討する管理組合にとり、一つの成功例としてのモデルケースとなりうる事例だけに、合意形成の過程、手法や建設計画についての課題、ノウハウなどが注目される。
また保留床(権利床以外の部分)処分型による経費の節減策はどこの集合住宅でも使えるわけではなく、条件の良くない集合住宅では建て替え計画に新たな視点を入れることも必要になりそうだ。
シンポジウム終了後は、3班に分かれて団地内の見学会。大きく成長した樹木やゆとりのある敷地設計などは、当時の団地設計思想をうかがわせた。住戸の内部については、3DKという間取りに対し48平米という面積が、昨今の住居に比べると手狭に感じられた。住民の話によれば、主な問題として、エレベーターがないこと、水道配管の老朽化、洗濯機置き場の不備、スラブの厚みの不足による上下の騒音などがあったという。
第2部では焼き鳥やビールなどの屋台が出て、お祭り気分を演出。歴史を振り返り、2年後に再び元気に戻ってこようと呼びかける趣旨で、住民の絆を深めるイベントだった。また一角には新しい団地の模型が展示され、建替事業協力者に選定された東京建物株式会社による販売活動の始動を感じさせた。大型液晶パネルによる40年の歴史を振り返るスライドショーは、諏訪団地が日本の高度経済成長と共に歩み、昨今の日本経済停滞の中で再生に向けた動きなど、日本全体の動きを象徴するかのような力のこもった編集。住民は和やかに談笑しながら思い出や懐かしさにうなずき、2年後の再会を誓い合っていた。