かつて多摩センターの空に、ひときわ誇らしげにそびえていた京王プラザホテル。
その姿は、まるで街の中心に灯る静かな星のようであった。
だが2023年、その星は静かに消え、今では跡形もなく風に溶けてしまった――かに見える。
けれども、目を凝らせばわずかに残る“かけら”がある。
それは壁の一部であったり、どこかの歩道のタイルであったり、あるいは人々の心の中に埋め込まれた断片であったりする。
それぞれのかけらが、あのホテルのロビーの匂いを、照明のぬくもりを、静かなピアノの音を思い出させる。
消えた建物というものは、完全に消えることがない。
記憶の底に沈みながら、時折、陽光に反射してきらりと光る。
多摩センターの街角を歩けば、その小さな光が、いまもどこかで呼吸している。
