11月3日、町田市の桜美林大学で同大早野透ゼミ主催の原発問題をテーマにした講演会が開かれ、菅直人元首相が東京電力福島第一・第二原発の事故を通しての経験談や、今後の再生可能エネルギー戦略について話した。会場は満員となり、入場を諦めて帰る人も出るほどの盛況だった。(文と写真:木内 慧)
講演で冒頭、菅氏は、2011年3月11日に国会で揺れに遭遇してからの原発事故対応での経験を時系列に沿って紹介し、自らも事故前は「日本の科学技術で支えられている原発は安全」と考えていたが、実際には「事故の原因のほとんどは3.11以前につくられていた」と指摘した。事故当時、情報が錯綜する中で首都圏全域を避難区域にしなければいけない可能性があった事などに触れ、「政治家として言うべきことでは無いかもしれないが、最後のギリギリのところは神のご加護があったと思っている」と話した。
また、自身がトルコなどに向けて原発輸出のトップセールスをしていたことについても「今は恥じている」と話し、「完全に原発事故を起こさないただ一つ方法は、日本、世界から原発をなくすことだ」と訴えた。
2011年12月の当時の野田佳彦首相による原発事故収束宣言については「あくまでプロセスの一過程が達成されただけの段階で収束という言葉を使った。言葉がまずく、誤りだ」と批判した。
再生可能エネルギーについては、固定価格買取制度の下、太陽光発電だけで原発20基に相当する申請があることを紹介。2020年までの脱原発、2050年までの脱化石燃料の政策を掲げるドイツを例にあげながら、日本でも再エネと省エネの活用が重要だと話した。
また、自然エネルギーの不安定さへの対策として、デンマークで視察したという、風力発電で得た電力で水を電気分解し水素を備蓄し、水素燃料電池を持つ家庭に供給する「水素センター」のモデルを紹介し、原発や化石燃料に依存しない社会は実現可能だと訴えた。
講演会の様子は後日『デモクラTV』で無料配信される予定とのこと。