多摩永山公民館のベルブホールで4月12日、『ペコロスの母に会いに行く』の特別上映会が開催された。この映画は『キネマ旬報』ベスト・テンで、2013年の邦画ベスト・ワンに選ばれるなど、高い評価を得た作品。第1回上映後にはプロデューサー・村岡克彦氏によるゲストトークが行われ、喜劇映画ならではの製作裏話が会場を盛り上げた。
長崎を舞台にした『ペコロス〜』は、“どんげんでんなる(どうにでもなる)”という長崎人特有のポジティブな見方から生まれた。原作は岡野雄一氏による同名漫画で、映画化のきっかけは岡野氏と諫早市出身の村岡氏が飲み友達だったこと。村岡氏が自費出版の手伝いをしたところ、フェイスブックでの宣伝があっという間に拡散し、一週間で完売した。新しい手法として、インターネットによるプロモーションを試したものが功を奏した結果、友人であるもう一人のプロデューサーと「映画にしましょう!」と、製作に至った。監督選びも長崎にとことんこだわり、島原市出身の森崎東監督への殺し文句は、「原作本で長崎が舞台です」だったという。
そんな指名を受けた森崎監督も「自分で最後に撮るのはやはり故郷の映画。認知症を自覚する自分が撮らずに誰が撮る。まさに運命」と、即決だったらしい。主演を依頼したのは、クランクイン当時88歳の赤木春江。森崎監督の作品ならばと二つ返事で引き受け、ギネス認定の“世界最高齢での映画初主演女優”が誕生した。見る人も辛くなるような認知症というテーマに、自身も「母の介護で施設に入れるのは抵抗があったが、入れたら笑顔になった。『もっと早く』を実感した」とのこと。また、赤木さんと同様、打診した他の俳優らも出演を快諾した。
映画のコンセプトは「喜劇だからこそ、その中に真実がある」とする村岡氏。一番見てほしい部分についての問いには、「思い入れがたくさんある。全部見てほしい。長崎という土地の素晴らしさ」。観客からは、?「今と昔を行ったり来たりする手法でも、分かりやすかった」といった意見が出された。村岡氏の母校である諫早高校出身者2名から声が掛かかる場面もあり、会場は和やかなムードに。
今後は日本のみならず、韓国や台湾でも上映される予定。7月2日には岡野氏の漫画や映画メイキングがたっぷり収録された特典付きDVDも発売される。
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